愛しき人よ


「決めたよ、アスラン。僕、告白する」
「キラ!? 告白って、誰に?」
「決まってるじゃないか。フレイだよ」
「フレイ・アルスター!? ……キラ、相手が誰かわかってるのか? フレイ・アルスター、軍の事務次官の一人娘、天下無敵のお嬢様だぞ?」
「……アスランだって天下無敵のお坊っちゃまじゃないか」
「オレのことはどうだっていいんだ。――いくらキラでも無理だよ。相手が悪すぎる」
「アスランはいいよね、ラクスって婚約者がいてさ」
「あれは親同士が勝手に……!!」
「僕だって彼女がほしい」
「うっ」


ずっと前から決めてたんだ。
告白するなら、この裏庭がいいって。
瑞々しい新緑に囲まれた小さな噴水のある、花の香りでいっぱいの裏庭。
建物の横から裏庭に出たら、きっとすぐ目の前、噴水のところに腰かけたあの子がいる。
だから、あの子を見つけたら、云うんだ。
決心が揺らがないよう、間を空けずに。
この気持ちを、ほんのいくつかの言葉にこめて。
精一杯に。


「君が好きです。僕と付き合ってください」
「ああ、構わないが」


届いた声は、高すぎず低すぎず、なのに耳に残って。
女の子特有のそれとは全く違うのに不思議な響きをもってこちらに届く。


「…………あ……」
「ん?」


驚くほどに整った顔立ちは、一見きつく鋭いようにも感じるが、けれどどこか優しげな色合いを見ることができるようにも思った。
可愛かったり美人だったりする子はたくさんいたけど、こんなに綺麗な人を見るのは初めてだった。


「付き合うのは構わないが、私と君は初対面だろう? まずは自己紹介といかないか?」
「は、はい。――僕はキラ、キラ・ヤマトです。この学校の高等部の、2年生です」
「私はラウ・ル・クルーゼ。大学院2年だ」



そうして、僕らは出逢った。
それが偶然か必然なんて、そんなことは知らない。
僕らは出逢って、ここにいる。
それだけが、揺るぎない真実だった。






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