47.スイッチ



ぱち、と軽い音がして照明が落ちる。
薄暗い部屋の中、ラウはベッドに身体を横たえるとゆっくりと息を吐きだした。

闇に身を任せるのは好きだ。
自分がどこにいるのかわからなくなるから。
先の見えない闇を見つめていると、いつしか方向の感覚までなくなってくるようで。
自分が寝ているのか、立っているのか、どちらが上でどこが下なのか。
何もわからず、何も考えず、ただぼんやりと身を任せるのは心地が良かった。
誰もいない何もないどこか遠くへ行ってしまえるような気さえして。
このまま、時が止まってしまえばよかったのに。

「――!」

瞬間、色のない白に襲われ、目が眩む。
きつく目を閉じ、余韻が薄れるまで瞼の裏の淡い白を見つめていた。
ようやっと楽になってきたころ、目を開けると、眼前には覚えのある呆れたような顔がひとつ。
「なーにしてんだ、お前は」
光を背に立つその姿は、まるで。



指先ひとつで闇から光へと導くお前が一体どうして私の前にいるのだろうと、何度思ったか知れない。
お前は今でも、光の中から手を差し伸ばしているのだろうか。
その向こうにある何かなどわからないくせに。
それでも、お前は――。




    切り替えは案外簡単なことかもしれない。