43.フレーム



そこに目を向ければ、いつでも君が笑ってる。
細い木の枠におさまったまま。



君は自分の姿を形に残すのを嫌っていたから、
写真は滅多に撮らなかったね。
撮るのを許してくれるのは、
風景をメインにした記念写真くらいで。
それだって、頼みこんでやっと撮れたものだから、
君の表情なんてわかるわけがない。
例え顔だけを引き伸ばせたとしても、
君の顔がどんな風だったかなんて見なくてもわかるから、
そんなことをする意味なんてなかったし。

だけど。
君も知らない写真を、1枚だけ持っている。
あのとき、
君はこれを消去したと思っていたのだろうけれど。
本当はちゃんと残ってて、秘密で現像したんだ。

それはほんの一瞬の出来事。
偶然が重なり合って撮れた、1枚の写真。

君は笑っている。
とても綺麗な笑顔が、そこにはある。
それは僕の一番好きな君の顔。
君の一番綺麗な部分が見える瞬間。



一瞬の永遠は確かに永遠だけど、
どうしたって一瞬は一瞬でしかなくて。



細い木の枠の中で微笑む君を見て、
君のぬくもりを思い出して、
僕は君の夢を見る。




    ちょっと趣向を変えて。