「好きだ」 「そうか」 「本当にわかってんのか?」 「何がだ」 「俺はお前が好きなんだぜ?」 「そのようだな」 全く話が通じていない。 思った。 これはもしや、宇宙人と話をしているのかもしれない。 「――貴様っ……!!」 最初にキレた方が、冷静な方の襟首をつかみあげた。 「俺は、伊達や粋狂でそんなことを云っているわけじゃない」 「……」 必然的に、至近距離で見つめ合うことになる。 どうしてか、互いの顔の距離が次第に近付いていき―― 「ストップ」 突如目の前に現れた白いプリントらしきものに、跡部は思わず身体を引いた。 そのまま肩を押され、手塚から引き離される。 誰だと思いながら目を向けるとそこには。 「公衆の面前で何してるの、跡部くん」 にこにこと絶やさぬ笑顔をたたえているのは、噂の青学bQで。 厄介な奴が来た、とばかりに跡部は舌打ちをすると、あっさり2人に背を向けた。 しかし、数歩歩いて思いついたように振り返り。 「忘れんなよ、手塚。俺は本気だからな」 ――紙一枚程度の壁ならばすぐにでも破ってさらっていってやる。 そんなセリフが、聞こえた気がした。 不二には。 「案外、平気そうだね。それとも本当に気付いてないの?」 「?」 相変わらず表情の変わらない部長を見上げ、不二は微笑む。 「キス、されそうになってたんだよ?」 しばしの沈黙。 おや、と不二は思った。 てっきり無表情無感動な鉄面皮だとばかり思っていたのだけれど。 (そうではないことも充分承知のうえだが) 赤い。 誰がって。 手塚が。 多分、本人もよくわかっていないようだけど。 もう姿の見えない氷帝テニス部の部長に向けて、不二は呟く。 「――――脈アリ、らしいよ」 良かったね、跡部くん。 |