こえ


あおいそら

ひろいうみ

このむこうに きみは いるの



「――何、してるんだ?」
振り返らなくたって、誰かはわかる。
こんな、はっきりとした快活な声を出す少女は、この艦内に一人しかいない。
「海、見てたんだ」
呟くと、少女は呆れたような怒ったような顔で隣に座り込む。
「そんなの見りゃわかる」
「……そうだね」
穏やかな海。
かつて月から見ていたこの海はとても美しく――憧れていた。ずっと。
まさか、こんな状況で来ることになるなんて思ってもみなかったけれど。

――お前も来い!
――俺たちは仲間だ!
――なぜ俺たちが戦わなくちゃならない!?

空を見上げていると。
いつでも響くのは、優しかった親友の声。

――それはとても悲しいことですわね。

あたたかな気持ちをくれた、美しい少女の声。

「……そうだね」
「え?」
「何でもないよ」
上手に、笑ったつもりだったのに。
ぽん、と頭に乗せられたのは、いつか泣いていた自分を抱きしめてくれた手の平で。
「何でもなくなんかないだろ、そんな顔して」
がしがしと撫でられ、思わずその手を振り払うと、彼女は楽しげに笑っていて。
「ほんとわけわかんないな、お前」
「何だよ、それ」
呆れた声を出すと、彼女はまた大きな声で笑って。
「ま、それがお前だしな」
ついでのようにまた頭を叩かれ、彼女は勢いよく立ち上がって。
海からの風に身体をさらす。
「んー、気持ちいいー」

――あなたが優しいのは、あなただからでしょう?

似てなんかないのに。
笑顔がかぶって見えるのは、なぜだろう。



――キラ

聞こえるのは、懐かしい声。

大切な、君の声。









この作品は、某所にてこっそり発表されていたものですが
気に入ってたんでちゃっかりこっちにも出しちゃいました。
キラとカガリの誕生祝。