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 少々夢を見すぎかもしれないけれど。
 あれが落ちてきたとき、
 一瞬、本当に一瞬のことだけれど、
 天使が舞い降りたのかと思ったのだ。



すぐ目の前に落下してきたそれに、思わず手を伸ばしてしまったのはおそらく反射以外 のなにものでもなくて。
予想に反して、両腕の中にすっぽりとおさまったそれはあたたかくて柔かくて、レイ はわずかに目を見開いた。
腕の中には、白いふわふわしたもの。
真っ白なそれからは、けれど確かに強い鼓動を感じて。
もそり、と動いたその白から覗いた青に、どうしようもなく目を奪われて動けなくなる。
居心地が悪かったのか、腕の中の白はごそごそとその身を動かして具合のいい体勢となった のか身体を落ち着かせると、今度こそしっかりとレイを見上げてきた。
みゃー、と響くのはもしかしなくても鳴き声だろうか。白い細身のその生き物は、なぜか 当然のようにレイの腕の中におさまっていて。
「……猫?」
今さらのように呟いて、レイは二度三度と目を瞬かせた。
猫だ。どこをどう見ても、ここにいるのは猫でしかない。飼ったことはないけれ ど、それでも猫ほどに一般的な愛玩動物ならば普通は見ただけでわかるようなもので。
しかし、この猫は一体どこからやってきたのだろうかと、レイは顔を上げて周囲を見やる。
レイはちょうど小さな公園の前を通っていた。公園の周りにはぐるりと木が植えてあるた め、おそらくこの猫は、このうちの一本から飛び降りてきたのだろう。
すぐ真横にある気を見上げ、レイは小さく溜息をついた。
どうしてこんなにタイミングよく空から猫が降ってくるのだろうか。狙っていたと しか思えないその状況に、どうしたものかとレイは猫を見下ろした。
「木から降りられなくでもなったのか?」
それにしても、木の上から人の前に飛び降りる勇気があるのなら、自力で木を降 りることも可能だと思うのだけれど。
まあ猫には猫の事情があるのだろうと思い直し、レイは人気のない昼間の住宅街を ぐるりと見回した。
この猫には首輪はつけられていないものの、真っ白な毛色や毛並みのよさを見ると 野良猫とは到底思えなかった。むしろ、とても可愛がられ大切にされているのではない のだろうか。
この猫が飼い猫であると判断したレイだったが、飼い主が近くにいる気配はない。
猫は、初対面のレイの腕の中でも大人しくしていた。様子を見る限り、かなり 人には慣れているらしい。元々人懐こい猫なのかもしれないが、そんな猫を外に放す など、飼い主は一体なにを考えているのだろうか。
「お前は、どこからきた……?」
軽く頭を撫でてやると、白い猫は気持ち良さそうに目を瞑る。ごろごろと喉をならす その姿に苦笑し、けれどどうしたものかとレイは小さく溜息をついた。




To be continued.