どうしてここにいるんだろう、と思ったことがある。 どうしてここにいて、こんなことをして、これから俺はどうするんだろう。 少し考えて、少し目を閉じて、少し頭を振って。 もう少ししてから、やめた。 (どうでもいいや) テーブルに放ったばかりのゲームを取る。 電源を入れると、見慣れた画面があらわれた。 「……死んだ」 死んだ。死んでしまった。弱っちいやつめ。 (俺がいなきゃすぐに死ぬくせに。俺の云うとおりに動いていればいいんだ、お前は) なんとなくイライラして、俺はゲームの電源を切った。 部屋はしんと静まり返って、俺の隣には誰もいない。 (つまんねぇ) 腰掛けていたベッドにそのまま横になる。 天井を見る。空調の音が聞こえる。息をしている。心臓が動いている。 けど、自分がここにいることがわからない。 (何なんだよ、これ) 息をしていることが苦しくなる。 心臓の鼓動がうるさくて仕方ない。 あんまりうるさくて苦しいから、体勢を変えようと上体を起こした。 身体が少しだけ軽くなる。 指先に触れたのは、いつも持ち歩いているゲーム。 いつもこれしかやらない。 これしか、知らない。 電源に触れる。横に動かす。ONになる。 真っ黒の画面から、白い文字が浮かび上がった。 視界が広くなる。 何でも見える。何でもできる。 そうだ、これが俺なんだ。 どきどきした。わくわくした。 身体を動かしたくて仕方ない。 (ほら、ちょうど目の前にアレがいる) 死んでしまえ。 お前なんかいらない。 のろくさ動きやがって。弱いくせに。何にもできないくせに。 「死ねぇぇぇぇっ!」 何かを裂く感覚。 感じないはずのそれが、手のひらを痺れさせる。 命じられるままに。 俺の意思で。 俺は殺す。 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ お前なんかいらない。 お前たちなんかいらない。 だって俺の隣には誰もいない。 横にいるお前らとか、 後ろで笑ってるアンタとか、 そんなの、俺は知らない。 ただ、目の前にいるアイツを。 殺したい。 殺してやる。 (殺す) 「 撃 滅 !」 楽しくもない時間はあっという間に終わる。 身体が告げる、タイムリミット。 ぶつりと。 何かが切れる、音がした。 「…………ぁ…………」 (畜生、畜生、畜生) 気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い。 (何だ) (何なんだこれは) こんなものが欲しかったわけじゃない。 こんなものを望んだわけじゃない。 いつだって、ずっと。 欲しかったものは。 望んでいたものは。 もっと違う何かが、もっともっと別の何かが、どこかにきっとあるはずで。 けど、俺はそんなものは知らないしそんなものを探したこともなくて。 だから。 だから殺してやる。 ――――こんな声、きっと誰にも届かない。 (なぁ、あんたに聞きたいことがあるんだ) (俺は一体、何がしたいんだろう?) |