人間の死に、格別な痛みを感じることはない。
ここは戦場で、死ぬことなど日常茶飯事だ。


今でさえ、悲しみを感じることはない。




それなのに。



『――隊長』


柔らかな笑みを、甘いと思いながらも決して嫌だとは思わなかった。
微笑み、見上げる瞳は、いつでも真剣で。


『隊長が、好きなんです』


明確な拒絶を受け入れながら、彼はなお自分を慕っていた。




『それでは、行ってまいります』


決して欠かさない挨拶。
それは、彼だけのもの。


『ただ今戻りました』


帰還する彼の笑顔に、
安堵することはなかった。
それが当然のことだったから。





『それでも僕は、隊長が好きです』



笑顔はもう見えない。
彼を好きだったとは思えない。今でも。


けれど。





一度くらい、抱きしめてやればよかった。





わずかな悔恨。
気付かなければ良かったのに。








お前を失ったことを悲しいと思えないことが何よりもつらいよ。








ニコ→クルだったり。