おまけ
突然目の前に現れた二つの箱に、子供たちは驚いたように顔を見合わせる。
それはついさっき、ムウとラウの自宅に届けられたもので。
送り主は、ムウとラウの母親の親戚。
その箱は、それぞれがムウとラウ宛のものだった。
「かあさん、これ何?」
「ほら、前におば様のおうちのパーティに呼ばれていると云ったでしょう?」
「あー……うん」
覚えているようないないような。
首を傾げながらもとりあえず頷いて話を進めようとするムウに、ラウは呆れたような視線を送る。
ラウはその件についてしっかりと覚えているのだろう。
相変わらずのやりとりにムウがへらっと笑い返すと、ラウは軽く溜息をついた。
母はそんな2人に気付いているのかいないのか、楽しそうに話し続ける。
「出席しますって返事をしたら、ムウとラウの服を送ってくれるって仰ったのよ」
「へぇ……」
「服や靴のサイズは訊かれたけど、本当に送ってくれるとは思わなかったわ」
お祭り好きな彼女らしく、パーティはかなり盛大に、そしてしっかりとした形で行われるらしい。
全員フォーマルな格好が原則となるらしく、おそらく箱の中身は子供用のタキシードや革靴などだろうと母は笑う。
「かあさん、開けてみていい?」
「いいわよ、だってあなたたち宛に来たんだもの」
ムウはぱっと顔を輝かせて箱にとびついた。
綺麗な柄の包装紙を、どうにかそのままの形で外そうとしたらしいが、手先があまり器用でないためか包装紙は端からびりびりと破られていく。
「くそっ」
しばらくして埒が明かないと思ったのか、今度は盛大に紙を破く。
小気味良い音を立てて中身の箱が顔を見せ、ムウは勢いよく蓋を開けた。
「うわっ」
中から現れたものは、母の云ったとおりフォーマルスーツだった。
10歳の子供が着るものだから大人用より堅苦しくはないが、それでもちゃんとしたブランドのものだとわかる出来の良さで。
さらにその奥から現れたぴかぴかに磨かれた靴を手に、ムウはラウを振り返った。
「なあお前のは? 開けてみろよ」
ラウは面倒そうに箱を見下ろした。
人の多い場所を嫌うラウは、やはりパーティへの参加には不満があるらしい。
流石に母の前であからさまにそんな態度は取らないが、自ら開けることで参加を認めるのが癪なのだろう、その顔にははっきり嫌だと書いてあった。
「開けてみろって。どんなのか気になるじゃん」
「そうよラウ。せっかく頂いたんだから、ちゃんと合わせてみなくちゃならないし」
母の言葉にもラウは動こうとせず、ムウは諦めたように肩を竦めた。
「じゃ、オレが開けちゃおっかな」
勝手に宣言し、ラウ宛の箱を引き寄せ先程と同様に思いきり包装紙を破いていった。
「うわ」
「あら」
「……」
中から現れたそれに、3人はそれぞれ異なった反応を示した。