君に出会うまで


なぜ、と問うたことはない。
自分がそのあとどうなるかなんて、知りたくないけど、知らされていないけど、知っている。
今までもこうだったのだから。
これからも、多分――。


初めて見た人は、艶やかに笑っていた。
細い指で触れ、自分を見つめていた。
その人はいつも何かを云っていたけれど、何を云っているのかわからなかった。

次に見た人は、気障にウインクをしてみせた。
けれど細い手から大きな手に渡されたあと、穏やかなのに少しだけ冷たい色で自分を見下ろす目があった。
その人はいつも語りかけてくるけれど、自分を見てくれたことはなかった。

一番最近見た人は、驚いてからとても困った顔をした。
大きな手から放るようにして収まった手は細くも大きくもなかったけれど、それでも柔らかく自分を包みこんでいた。
その人はやっぱり困ったような顔をして、自分を見て溜息をついていた。


どこにいたいと、思ったことはない。
行き先を選べるわけはなかったし、行きたい場所があるわけでもない。
ただ、どこへ行っても変わらぬものがあると。
それだけは知っていたから。
どこだってよかった。
どこへ行っても、結局は同じことだと、知っていたから。

けれど、細くも大きくもない手は、守るように優しく自分を包んでいて。

『オレだけじゃ、ないよな』

零れた言葉は、見知らぬ響きをもって身体に染みこんできて。
身体がふわりと浮いたと思ったら、目の前には空色の瞳があって。
ただ真っ直ぐに。
見つめていて。

『これから、一緒に頑張ろうな』


勝手にするがいいさ、僕は僕のままなのだから。
そう云うように、僕はぱたりと尻尾を揺らした。