猫会議   ※ 全話終了後の話です。


猫のみなさんに質問です。
黙秘権は認めませんので、正直に答えてくださいね。


――ではまず、自己紹介をお願いします。

ラウ「名前はラウ。今はムウ・ラ・フラガという人間の家にいる」
ロイ「そういえばお前だけだな。元々どこにいたのか明確でないのは」
セイラン(以下、セイ)「前の飼い主をあまりよく思っていなかったらしいことはわかるけどね」
ロイ「そうなのか? それは初耳だな」
ラウ「……お前たちには関係ない」

ロイ「私の名はロイ・マスタング。地位は大佐だ。ヒューズ家に捨てられ、ハボックに拾われた」
セイ「地位のある猫というのも珍しいね」
ロイ「何を云う、ヒューズとエリシアに与えられた由緒正しい地位だぞ」
ラウ「(ぼそりと) 私的に与えられた地位というのもな……」
セイ「拾われたというのはともかく、捨てられたと胸を張って云えるものではないよね」
ロイ「どんな事実であろうと、全てが私に繋がるものだ。誇りこそすれ恥じることはない」
セイ「(くすっと笑う) 君らしいね」

セイ「僕はセイラン。オスカーからランディに預けられて、そのままランディの家にいる。彼は確か3人目の飼い主かな」
ロイ「お前もなかなか面白い経歴の持ち主だな」
セイ「そう? 僕はただ流れに従っているだけで、他には何もしてない。まあ、周りの人間のことなんて僕には関係ないしね」
ラウ「……」
ロイ「どうかしたのか、ラウ?」
ラウ「その割に、寂しそうな顔をしていたようだが……?」
セイ「――っ、そんなこと、あるわけがないだろう? あの人が勝手に騒いでいただけだよ」
ロイ「ふむ、そういうことか」
セイ「そういうこともどういうこともないよ。……って、なに笑ってるのさ」
ロイ「(楽しげに) いや、別に?」

セイ「そういえば、どうしてわざわざ自己紹介なんてする必要があるんだろうね?」
ロイ「確かにな、ここまで読んでいるのならわざわざ私たちがこんなことを云う必要もなかろう」


えぇとまぁ、こちらにも色々事情があるんですよ(汗)
それでは、次の質問へGOですGO!


――前の飼い主のお話を聞かせてください。

ラウ「……あまり、印象に残るような者ではなかった。常に私を傍に置きたがっていたというくらいだろう。――なんであろうと、結局は身代わりでしかない」

ロイ「理想の一家、とでもいうのだろうな、彼らは。みなとても優しかったよ。その時間がずっと続くものだと、信じて疑っていなかった。――あの日、ヒューズの目を見るまでは。……それでも、不思議なものだな。悲しいとは思ったが、彼らを恨むような気は一切ないのだよ」

セイ「前の飼い主、ね。彼は……そうだな、対外的には明るく気さくな男だったようだけど、家の中ではそうでもなかったな。今の飼い主は裏表がないけど、彼はなんていうか……何もない内面をたぐい稀な社交性で隠してる感じかな。だからこそ、人からもらった僕を別の人間に預けてまで外に出たがったんだろうしね」


――今の飼い主はどうですか?

ラウ「……どうというものでもない。用がないのになにかとかまわれるのは迷惑だ」
セイ「その割に、嬉しそうに見えるけど?」
ロイ「何だかんだ云っても懐いてるなどということは、見ていればよくわかるな」
ラウ「……(なぜか怒っているらしい)」

ロイ「あいつはいいぞ。文句を云いながらも私の要望には一応きちんと応えるし、こまめに世話もするしな」
セイ「君も、なんとかいいながら今を楽しんでいるよね」
ロイ「もちろんだとも」

セイ「そうだね、最近やっと僕の生活パターンに慣れてきたようだよ。最初はあまりに生真面目でどうしようかと思ったけど、真っ直ぐな奴は嫌いじゃないよ」
ロイ「全く正反対の性質に見えるがな」
セイ「だからこそ、というのもあるのかもね。何かと不安定だったときもあったようだけど、今はだいぶ落ち着いてるみたいだし」
ラウ「飼い主だけとも思えなかったがな……」
セイ「――っから、それはもういいってばっ」


――つまり、大好きということですね。

セイ「そこからどうして『つまり』にたどり着くのかが全くわからないんだけど」
ロイ「ふむ、好きか嫌いかと云われれば『好き』なのだろうが」
セイ「そうだね。――というか僕は、嫌いな奴はまず意識から排除するから、そういった意味では至極単純な答えだと思うけど」」
ラウ「……」
セイ「……ラウ?」
ロイ「……ラウ、黙秘権は認められていないようだが?」
ラウ「……………………嫌いでは、ない」


――みなさんそれぞれについてのお話を聞かせてください。

※ ラウについて

ロイ「あまり自己表現するのが好きではないようだな」
セイ「そうだね、僕はなかなか面白い奴だと思ってるけど、本人はそう思ってないみたいだ。もったいないことだね」
ロイ「……(お前に面白いといわれてもな、と思っている)」
セイ「あと、素直じゃないところも好きだよ」
ロイ「ああ、わかりやすいほどに素直じゃないな、あれは」


※ ロイについて

セイ「はっきり云って好きなタイプではないけど、彼のことは嫌いじゃないね」
ラウ「……いちいち騒がしいだけだろう?」
セイ「なにかと構うのが好きなんだろうね。君なんかお気に入りじゃないか」
ラウ「……(不本意そうにむっつり)」


※ セイランについて

ロイ「気があうというのだろうか、仲が良いわけでもないだろうけれど、一緒にいて退屈はしないな」
ラウ「……お前たちはな」
ロイ「おや、やきもちかい?」
ラウ「どうしてお前たちはそういちいち絡んでくるんだ」
ロイ「さぁ、なぜだろうね?」


――みなさんのこれからについては、いかがですか?

ラウ「……別に、なにも」
セイ「ないということはつまり、これから先もずっと一緒ということだね」
ロイ「ほう、それは嬉しいことだな」
ラウ「誰がお前たちのことなど……っ」
ロイ「ではやはり、ムウさんとのことなのか」
セイ「というより、それしかないんじゃないかな、彼の場合」
ラウ「……(また怒っているらしい)」

ロイ「そうだな、このまま平和に過ごすのもよし、多少の波があったとしてもそれはそれだ」
セイ「ヒューズさんとやらにも会えるし、って?」
ロイ「それもあるな(にっこり)」
ラウ「……正直すぎるのもどうかと思うがな……」
ロイ「それが私だ、案ずることはない」
ラウ「……」
セイ「ははっ、残念だねラウ、君の負けみたいだ」

セイ「これから、ね。またそのうち、別れるだの別れないだの騒ぐことになるだろうとは目に見えているけどね」
ロイ「ああ、そういえばそうか、お前だけはまだ『預けられている』段階だったな」
セイ「そう。期限が延期されただけで、まだ何も決まってはいない。それでも、あの人は喜んでるみたいだけどね」
ラウ「……物好きなことだな」
セイ「ランディがこの僕でいいという以上、最大限に使わせてもらうさ。でなければ飼い猫なんてやってられないよ。そういうものだろう?」


――ご協力ありがとうございました!
   これからもどうぞ、みなさんお幸せに!