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星降る夜。
その名の通り、限りない空にちりばめられた星々は、誇らしげに自らの光を惜しげもなく晒し。
大も小も赤も青も、静かにそこにあるだけだというのに。
広大な空を前に零れるものは、賛美の言葉ではなく細い吐息のみだった。

「あなたならご存知でしょうね、この大河にまつわる物語を」

空を割るように走る星の集団。
それはまるで川のように。
何かを運ぶように、何かを遮るように、ただ悠然とある姿に一体何を思えというのか。

美しくも壮大な河に隔たれた恋人たち。
一年に一度、定められた時の中でのみ想いを交わすことを赦されたふたつの星。
それを、羨ましいとも可哀想とも思わないけれど。

「――定められた逢瀬なんて、僕は望まない」

はっきりと告げる様子に、疑う要素など欠片もない。

「限られた時間の中で、精一杯誰かを想うことができたなら」

見えない未来を望むより。
今ここにある現実を生きていたいと思うから。


――今日のこの風景を、この星々を、あなたは覚えていてくれますか?


この空はきっと、いつまでもここにある。
新しき命と消えゆく命、その全てを包み込んで。

「僕はきっと、この空を忘れない」

真っ直ぐに見つめてくる瞳を、これほど嬉しいと思ったことはなかった。

「いつか思い出せなくなる日が来るとしても、決して忘れることはないんです」

驚いたように見開かれる目に、笑いかける。

「僕は確かにここにいて、僕の隣にはあなたがいて、僕はそれを幸せだと思う。
 これは紛れもない真実だと、僕は『知って』いるから」


ふ、と視線を空へと戻した。
思案するように目を細め、そしてまた視線は大地へと舞い降りる。

「一年に一度の大切な日――例えば、誕生日」

ぴくりと揺れる肩に、思わず苦笑する。
そんなこと、気付ていないなどと思うわけがないのに。
普段は嫌なはずなのに、期待をされるのも悪くはないと思えた。

「そんなものは、くだらないものだと思ってた。
 けれど、今のあなたが存在するまでの全ての過程の最も先にある事項がその日に起きたというのなら、
 僕はあなたが生まれたというその一日に感謝したい。……それだけのことなんです」

知らずに零れる笑みを、今は疎ましいとは思わなかった。
これはとても自然なことで、自分もそれを望んでいて、だからこそのものなのだと知ってしまったから。





大切なあなたに、贈りたいものがあります。

ほんの些細な、もしかしたら意味なんてないものかもしれないけれど。

それでも伝えたいものは、限りなく確かな想い。



――ルヴァ様、お誕生日おめでとうございます。






ああ、どうしてだろう。
抱きしめられたこの腕が、愛しくて仕方ない。







キリ番22を踏まれましたあきらさまへ。
リクエストは、ルヴァセイの季節&誕生日ネタということで。
本当は同じような内容でちゃんとストーリー立ててあるのを書いていたのですが、
気付けばこちらを仕上げていました。
(ちなみに最初に書いてたのはルヴァ様視点だったり……)
相手が誰だかわかりにくいような気はするのですが、
時期が時期なので推察してくださいということで(笑)
楽しんでいただければ幸いです。

……えーと、七夕過ぎても天の川は見られますよね??(汗)