はじめに


この物語は、『ムウ・ラ・フラガ誕生祝企画』として作られたものです。
内容は現代パラレルとなっておりますので、あらかじめご了承くださいませ。
ストーリーは、『英語 で10のお題』にそって進めていくことになります。

なお、この物語は原作・製作者・関係者様方とは一切関係はございません。
キャラクターの他に、設定等も既存の作品からお借りしている部分がござますが、 どうぞ広い心でお読みいただけたらと思います。

それでは、『ムウ誕生祝企画〜ムウラウ同居パラレル〜』を
どうぞお楽しみくださいませ。


   相川紗月
  (2004/11/20〜12/08)











出逢ったときの印象は、両者共に決して良いものではなかったのだけれど。


「おいおい、それじゃあ二重貸しじゃないのか!?」
「申し訳ありません! こちらで書類の行き違いがあったようでして……」
穏やかな春の日差しの注ぐ中、ムウは煮え切らない不動産屋の対応に苛立ちを隠せずにいた。
春から始まる大学生活の中で、不安でありながらも期待の度合いが高かったのは、 新たな地での一人暮らしが始まるという事実があったために他ならず。
慣れない土地で苦労しながらも、大学にも近い手頃なマンションを見つけ契約をし、 引っ越しの準備も終わっているというのに。
「あんたもなんとか云えよ、このままじゃ俺たち……」
「お前が契約をしたのは先月8日の何時ごろだ?」
半ば腰を浮かせているムウとは対照的に、ラウ・ル・クルーゼと名乗った青年は 悠々とソファに座り事の顛末を見守っているようだった。
ムウとの契約が重なり、さらにムウと同じ大学に進学するという その青年は、同い年とは思えぬほどに落ち着きはらって おり、元の性格ゆえなのか安易に人を近づけさせない雰囲気を持っていた。
ラウの肩まで伸びたウエーブの髪が揺れる。
その冷静な様にかちんときながらも、ムウはソファにどっかりと腰を下ろした。
「よく覚えてないけど、午後イチで来たから……1時前くらいじゃないか?」
「……そうか」
「お前はどうなんだよ」
「私は5時だ」
ふぅん、とムウは呟いた。
「てことは、権利が渡ったのは俺が先ってことだよな」
このまま押し切って自分が住むことに何の問題もないだろうと告げるも、 ラウは涼しげな顔で手近な新聞を手に取るのみで。
本来ならば、住む予定だった家を奪われ困惑しているであろう状況すらどうでもいいと 思っているような彼の冷静な表情を崩してやりたくて、ムウはにやりと笑った。
「お前の新しい部屋が見つかるまで、泊めてやっても構わないぜ?」
ラウはちらりと視線を上げムウを見た。
怒るか、とムウは笑顔を深めたものの、彼の言葉はムウの予想していたいくつかの パターンとは完全に異なるもので。
「お前がそういうのなら、泊まってやっても構わないが?」
しれっと云い放つ青年の顔には、ふてぶてしいながらも思わず見惚れてしまうような 微笑が浮かんでおり。
わずかに目を瞠りながらも、ムウは面白い、と口の中で呟いた。




ムウ・ラ・フラガとラウ・ル・クルーゼ
このようにして彼らは出逢い
これからのときを共に過ごすこととなった――。




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