call
甲高いアラームが、通信が入ったことを知らせる。 通信画面をのぞいてみると、どうやら相手は直接に自分のところへ連絡をよこしてきたようで。 軍などの組織を通さずに自分と直接連絡をとろうとする人物は限られている。 こんなときにどうして、と思いながらも通信接続のボタンを押すと、画面にはよく見知 った顔が映った。 『やぁ、レイ』 「デュランダル議長……」 ギルバートのにこやかな表情は常と変わらない。 けれど、とレイは画面の向こうの目を見つめ返す。 『まったく他人行儀だな。今はプライベートではないのか?』 「議長こそ、今は会議中ではないのですか」 『あぁ、そのことなのだけどね。実は少々てこずっていて、期間が延びるそうなのだ』 「……そうですか」 ギルバートが会議や会合でプラントの別の市を訪れることはそう珍しくない。 そして最近の案件はといえばまた面倒なものが立て続けに入っており、会議が何日もか かることも少なくはなくて。 新議長に就任してから、彼の忙しさがそれまでの比ではなくなっているのは当然のこと なのだけれど。 『寂しいかい?』 「――っ、誰がです」 『そうか、ならばしかたないかな』 「……なんのことですか」 『期間調整のため、今日から2日間がオフとなったのだよ』 そうしてギルバートはいつもの微笑とは異なるいたずらっぽい笑みを浮かべた。 『君が会いたいと思ってくれるのなら、ぜひ会いたいと思うのだけれどね』 レイはわずかに眉を寄せた。 ギルバートが何を云いたいのか、わからないわけではないのだが。 しかし、それを口に出せるほどにレイは自分の感情に素直ではない。 『どうする、レイ?』 レイの心境まで把握したうえで、ギルバートは先を促そうとする。 こういうやり方は卑怯だと思う。 答えなんて知っているくせに、それをどうしてわざわざ口に出させようとするのか。 『レイ』 そんな風に期待したような笑顔を、見せてくれるな。 心底そう思うのに。 「……会いたい、です」 『わかった。ではすぐにそちらに向かおう』 「……」 『待っていなさい、レイ』 そうやって嬉しそうな顔をするあなたがいやだ。 すべてをわかっていて促してくるその笑顔がいやだ。 なぜ、この人にこうして心を乱されねばならないのか。 ――そう、思うのに。 『待っていなさい、レイ』 そんな他愛ない一言に、一喜一憂してしまう自分が、多分一番いやだ。 |