『1/2』


「君はこの状況を見ておかしいと思わないのか!」
「おかしいもなにも、俺見てねーっつの」
 そういえばあのとき一護は雨竜のすぐ後ろにいて、角度によっては中の様子など 全く見えなくともおかしくはかったのだと雨竜は気付く。
 かといって一から説明するのも気力が要るというか億劫というかぶっちゃけ面倒く さいので、雨竜は浦原商店の戸の前まで一護を招き寄せてひたと睨み据えた。
「ならもう一度この戸を開く。一瞬だ。――敵を見誤るなよ、黒崎一護」
 敵って誰だよ、と反射的に入る一護のツッコミを雨竜は聞き流して扉に手をかけた。

 開けて、――閉める。

「……なあ石田」
「なんだ黒崎」
「お前、双子の兄貴がいたのか」
「いるわけがないだろう、僕は一人っ子だ」
 淡々とした言葉の中にも一護の動揺が垣間見られて雨竜はざまあみろと思う。あんな ものを見て動揺しないほうがきっと嘘だ。
 店の中の二人は、おそらく先刻と同じように戸の正面に立っているのだろう。向こ うがこちらをどう見ているかなんてそんなことはわからない。というより、今の雨竜 にはそんなことを考えている余裕すらないのだった。
「えー、大変申し上げにくいんですが」
 横合いから申し訳なさげに浦原が口を挟む。
「実はですね。あの方々は、お二人のお父様なんです」
「……は?」
 一護はわけがわからないといった風に、雨竜は心底嫌そうに。ニュアンスは違 えど全く同じ音を、二人は同じタイミングで発したのだった。
「ちょっと待ってくれよ浦原さん……あれが、親父?」
「そうっス」
「――アレが、髭?」
「君は自分の父親を髭で判断するのか」
「いやでもおかしいだろ!」
 雨竜のツッコミをあっさりスルーしながら、しかし一護は絶好調混乱中だった。
 だっておかしいだろう。
「なんで親父が制服着てんだよ!」
 その言葉に、雨竜は目から鱗が零れ落ちる気持ちで一護を見た。
「……確かにそうだな。いくら竜弦でも、高校生のコスプレをして似合う歳ではない」
「コスプレってお前な……」