BLEACH de 種 




 戦況はこちらに不利と見てとれた。
「引き上げる……?」
 けれどなぜか、敵機であるMSが次々に引き上げていくのが視界に映る。
 一護は愛機のコクピットの中で吐き捨てるように呟いた。一体なんなんだ、これは。
 戸惑いながらも、一護が忌々しく顔をしかめたそのとき。
 ふ、と。
 感じたそれは言葉にできない感覚だった。
 誰かに呼ばれている? 誰かに見られている? 誰かが、そこにいる?
 わからない。わからないけれど、その感覚は一護をその宙域に一瞬でも引き止めるのに 充分なものだった。
「けど、……まだなんか……これは!」
 覚えのある、けれどわからないこの感覚。いつか出逢った、何者かと自分と を繋ぐ見えないライン。
 そのとき、漆黒の宇宙を切り裂くように真白きMSが一直線に一護へと向かって くるのが見えた。



 軍服のままコクピットに乗り込み、自身のシンボルともいえる白のMSを駆り、雨竜 は宇宙に飛び出した。
 向かう先はただひとつ。この感覚をたどる先にいる、愛しくも憎いただひとり の男。彼も今ごろはこの感覚を共有しているのだろうと思うと不思議と笑いが零れた。
 生きるか死ぬかの殺し合いをしているというのに、雨竜は胸の奥が熱く なっていくのを感じた。その先には、求めたあの男がいる、ただそれだけで。
「僕が君を感じるように、君も僕を感じるのか……? 不幸な宿縁だな、黒崎一護!」
『お前、石田――石田雨竜だな!』
 その声がいつの間にか繋げた通信を通してのものなのか、それともこの感覚 に乗って届けられるものかはもうわからなかった。
 けれど、それはごく自然に雨竜の中に流れこみ、雨竜の言葉もまた彼に届いて いるのだと知ることができた。
 雨竜の機体に気づいたオレンジのMAは、即座に方向転換して攻撃を避けて いく。互いに互いの動きが手にとるようにわかり、だからこそ一歩二歩先 の攻撃を仕掛けていく。
「君はいつでも邪魔だな、黒崎一護! ――もっとも、君にも僕がご同様かな!」
 おそらく一介の軍人にはありえない速さで攻撃を避け、攻撃を仕掛けていく。
 それはまるで戯れるかのように。
 しかし戦闘は場所を変え、気づけばコロニー・ヘリオポリスの内部へと2機は侵 入していた。
 雨竜にとっては好都合だった。このコロニーがどうなろうと、雨竜には関係 がない。否、どうなろうとも、どうにでもできる。
 オレンジのMAはすぐ真下にあった。
 出てきてしまったこの場所と、逃げ場のなさに戸惑っているだろうことが手 にとるようにわかる。
「この辺で消えてくれると嬉しいんだけどね、黒崎!」
 銃口が黒崎一護の駆るMAを捉え、一瞬の躊躇もなく雨竜は引鉄を引いた。



ガンダムSEED、2話
ムウ=一護、ラウ=雨竜で