ハリネズミの恋
ハリネズミが恋をした。 ヒマワリに恋をした。 ハリネズミはヒマワリを見上げていた。 眩しいヒマワリを、いつもいつも見上げていた。 けれどヒマワリは高すぎた。 いつだってヒマワリは太陽を追っていた。 だからハリネズミは、ヒマワリには届かない。 ある日、ヒマワリが落ちてきた。 高みから落ちてきた。 ハリネズミはヒマワリに駆け寄った。 ヒマワリの近くに行きたかった。 ヒマワリと同じものが、ハリネズミにも見えると思った。 ハリネズミはヒマワリに触れようとした。 ヒマワリはずっと空を見上げていた。 ハリネズミが手を伸ばしたら、ヒマワリの花びらがひらりと落ちた。 ハリネズミは知っていた。 自分のことを知っていた。 近づけば近づくほど、ハリネズミは相手を傷つけるから。 相手に付いた傷は、ハリネズミの傷にもなるから。 ハリネズミは知っていた。 傷つく痛みを知っていた。 だからハリネズミは、ヒマワリから一歩離れた。 ヒマワリを守るため、ハリネズミを守るため、ハリネズミは去ろうとした。 太陽を見ていたヒマワリは、けれどハリネズミの背中に声をかけた。 ハリネズミは、振り返った。 振り返って、足を止めた。 ハリネズミは僕、ヒマワリは君 ………なんて、そんなの笑い話にもならない。
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