パーティの前に 1 




「石田、固まってないでちゃんと着ろよ」
「わかってる」
「トンズラしようったって無駄だからな。表で井上たちが待ち構えてるし」
「……わ、わかってるよ!」
「ったく、お前のは仮装にもなんねーような仮装なんだから、今さら文句いうなよ」
「だから文句は云っていないだろう」
「まあ、ケイゴみたいにノリノリでやられても困るけどな」
「……浅野君は確か、フランケンシュタイン?」
「そう。最初はチャドにやらせる予定だったらしいけど、なんかいつの間にか傷とか 釘とかついてた。ケイゴに」
「本格的だな」
「まあな。あいつのメイクしてたっていう水色も、ちゃっかり魔女になりきってたし」
「魔女? 魔法使いじゃないのか?」
「いや、魔女。すげー普通にスカートはいてたぞあいつ。井上がやっぱり透明人間やりた いって云うから交換したんだと」
「……」
「魔女に比べりゃお前のなんて普通も普通だろ。ほら、その格好でそこら歩いたって大 して目立ちゃしないって」
「目立つだろう。黒いスーツに、それにマントだぞ!」
「……ていうかお前、白い服にマントで街中歩いてたじゃねーか」
「あれは滅却師の正装だ!」
「へぇ、……つーかマジ似合うな。吸血鬼ってほど怖くはないけど、色白いし細い し、なんか不健康で」
「どういう意味だよ!」
「太陽に当たってなさそうな感じとか」
「失礼だな君は! そういう君こそ……」
「? ……なんだよ」
「君こそ、犬にしか見えないじゃないか!」
「シツレイだなお前! しょーがねぇだろ、元々は犬耳なんだから」
「オレンジ頭だから獣耳って発想はわからないこともなかったけど、君に犬の耳と尻尾 じゃ洒落にならないよ」
「犬じゃなくて狼男だっつーの」
「いや、犬だ。それは絶対柴犬だ」
「柴かよ!」
「うん。……犬なら可愛いよね、君」
「てめ、」



「黒崎くん、石田くーん。着替え終わった〜?」