星に願いを



空を駆ける星々は

一体どこまで行くのだろう

僕らの想いを乗せたまま



「よっつ」
草むらに寝そべって。
何をするでもなく。
ただ、空を見上げるのは好きだ。
「いつつ」
深夜だから風は少し冷えるけれど、大地はあたたかく心地が良い。
「……何をしているんだ、お前は」
真上から降ってきた声に視線を向けると、そこには呆れたように自分を見下ろす炎の守護聖の姿。
「星を、見ていたんですよ」
ゆっくりと身体を起こしながら、セイランは再び空に目を向けた。
彼に立ち上がる気配がないことを見て取り、オスカーもその傍らに腰をおろす。
「星? ……ああ、そういえば今日は流星群が」
「むっつ、ななつ」
オスカーの言葉を遮るように流れる星に、セイランは重ねて声を発する。
その頬に、オスカーはそっと触れた。
「いつからここにいたんだ? 冷たくなってるじゃないか」
「さあ。少なくとも、百は数えたかな」
流れ星の数を。
「……つまり総計107ってことか」
今度こそ呆れた溜息をついて、オスカーは草の上にごろりと寝転がった。
「服、汚れますよ」
「今さらだろう? 少なくとも、そんな格好で寝ていた奴に云われたくはないな」
執務服のままのセイランは、「確かに」と苦笑する。
夕方から姿が見えないと思っていたが、まさかずっとここにいたのだろうか、とオスカーは考える。
執務をさぼって、こんな人気のないところで、ただ空を見上げて?
……彼なら、やりかねない。
むしろあまりに彼らしいその様子がありありと思い浮かんで、オスカーはこみ上げる笑いを抑えることができなかった。
ランディやマルセルが星を見るためだけに急いで執務を片付けている間、この青年はひとりのんびりと暮れ行く空を眺めていたのだろう。
「なに、笑ってるんですか」
その口調には呆れの色が混じっていたが、気にはならなかった。
小さく笑い続けるオスカーを冷たく一瞥して、セイランは真っ直ぐな視線を振り払うように空を見上げた。
流れる星。
たった一瞬のうちに彼方へ消える、遠い輝き。
ひとつふたつと流れる星の輝きを、オスカーはセイランの瞳の中に見る。
「何か願い事でも?」
セイランの瞳は、雄大な星空にとらわれたまま。
しかしその意識はしっかりとオスカーに向けられていて。
「……いや?」
そういうお前はどうなんだ、と尋ねるオスカーをセイランは興味深そうに見やる。
「気になりますか?」
「そりゃあ、まぁ、な」
「教えて欲しい?」
「教えてくれるのか?」
セイランはにこりと笑う。

「嫌ですよ」

オスカーは溜息をついた。
「……だろうな」
肩を竦め、苦笑する。
そんな彼を見て、セイランもまた笑みを浮かべた。



輝く星空に、流れゆく星々に、彼らは願う。
このときを永遠に、などとは考えない。

けれど。

今はもう少しだけ。

この、穏やかなときの中で――。




オスカー×セイランです。
久し振りにオスカーを書いた気がします。
オスセイはずっと好きなんだけど、
比較的最近書いてたのは別のカプだったからなぁ……。
でもやっぱり好きです、オスセイ。