21.色



目を開くと、そこには何もなかった。

なかったのだ、何も。

広がるものはただ、透けるような青といくらかの白。

そして白にも黄にも見える光のカタマリと、視界の隅にはわずかな緑。

どこからか風が吹けば何かが確かに揺れたけれど、

やはりそこには何もなかった。


何もない風景。

わずらわしいものなど何ひとつない、まっさらな風景。

ここがどこだろうと今がなんであろうと関係なく、

ただただ心地良いと思う。

そうして気づいた。


――ああ、これがお前の色か。